2013年12月24日火曜日

冬の滝行めっちゃ痛い



めっちゃ痛い。あの「冷たすぎてもはや痛い」みたいなよく聞くやつじゃなくて、普通に水流が打撃として痛い。青アザができるんじゃないかと思った。





12月23日、関西圏のとある滝へ向かった。今回は都合上、滝の名前は出さないでおくんだけど、「日本の滝100選」にも選ばれている、滝好きには有名なところだと思う。
駐車場から滝までは5分ほど、ってアクセスの良さで、その間にもいい感じの小滝が出迎えてくれる。


「こんなん別にまだ前座なんで」ぐらいの余裕感なんだけど、普段滝の少ない土地に住んでる自分はもうすでに興奮している。


で、目的の滝はこれ



「ウオー!」と声が出た。大きな花崗岩を滑り落ちる幾筋もの水流。すばらしい。すごく美しい滝!



「ンー」「ンア」「ウオー」と感嘆の声をあげながら滝を眺めてると、ご老人4名と、お孫さん2人、地元の方らしき6名が登ってこられたので「こんにちはー」と挨拶をする。
ご一行は竹ボウキとチリトリで滝周辺の落ち葉の掃除を始めた。チビッコたちも熱心に掃除している。一団が手慣れた感じで掃除を進めていくと、滝周辺がみるみるキレイになっていく。

わー地元の方に愛されてる滝なんだなー、と嬉しくなってたら、掃除を終えたご一行が数珠やロウソクを取り出し、団体名(仮名で『光の道』とします)のタスキを肩にかけ始めた。おっ、これは…?



滝の横、岩窪にロウソクと供物を捧げて祈りはじめた。宗教の人だ!
経典を読み、30分~1時間ほど滝の神様に祈りを捧げていた。アツい。

目の前の滝はほんといい滝なんだけれど、もはや『光の道』の人たちが気になってしかたがない。
お祈りが終わると各自が手に鈴を取り出し、高らかに歌い始めた。オリジナル宗教ソングだ。滝の音と鈴であまり聞き取れないけど、お経みたいな曲ではなく、意外にもカーペンターズ的な70年代爽やかアメリカン・ポップスな曲。謎のエバーグリーンさ


唄い終わったご一行に、「…すいませ~ん」と恐る恐る話しかけてみた。
女性が怪訝そうに「はい…?」と答える。おれもあちらに対してだいぶ怪訝そうな顔をしてたと思うのでそこはおあいこだ


「急にすいません。僕たち滝が好きで大阪から来てるんですけど、この滝は神聖な場所なんですか?古くから滝行する人とかもいる滝だ、って話は聞いてたんですけど」
「そうですね、修行というか…。私たちもこれから滝行をするんですよ」
「えっマジですか!この寒いのに!僕らも滝行したことあるので興味はあるんですけど、すごいですね」
と話したところで、女性の目の色が変わった。
他のメンバーにも「こちらの方も滝行をされてるんですって」「あら」「お若いのにやりますな」みたいな感じでなんか紹介される。

これはまずい流れでは、入信みたいな話になったらどうしよう、と考えてるところで
「良かったら今日いっしょに滝行をされませんか?」と誘われる。
「いやいやいやそれは…!何の用意もしてませんし」「そうですか…」とガッカリされた。


とはいえ滝行はめっちゃ興味あるというか、ぶっちゃけ見たい。

「でも、もし失礼でなければ滝行を見学させてもらってもいいですか?今後また来るかもしれないし」
「もちろんです!私達は毎月◯日にいつも修行を行っていますのでいつでも!」
「あ、そういうまた来るじゃなくて…あの…夏場とか自分たちで勝手に滝行をすると怒られるんですかね?」
「あ、怒られる事は無いですけどもね、やっぱり水もとても冷たいですし、事前に適切な準備をされてからの方がいいと思うんですよ」
「はい」
「例えば私達がさっきしてたお祈りや唄ですとか」
「あっそっちのですか」
「あとやっぱり滝というか、水場には霊もいますので」
「えっ?あっ、はい」
「適切な行程を踏まずに修行をされますとね、もしかしたらそういう霊がね、弱った体にね、こう入り込んで…」
みたいな話をしばらくされたものの、無事NO入信で見学させてもらうことになった。

少し待っていると、薄い白装束に着替えたご一行が現れた。
ちなみにちびっ子たちは滝行はしないそうで、もうすっかり飽きてそのへんをキャッキャッ走り回っている。

白装束を来た4人が輪になり、お祈り・入念な準備運動・気合入れ・お神酒を口に含んで体に吹きかける儀式、とかなんやかんやする。
お神酒を吹きかけるやつはかっこよかったので自分たちも取り入れたい。でもパックの白鶴「まる」だった。



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「セーイ!」「キエーッ!」みたいな大声をあげて、気合を入れながら4人が順々に滝に打たれていく。一度打たれた後は場所を変えて、さらにもう一巡。けっこう長いこと滝に打たれている。
80歳ぐらいの白髪のお爺ちゃんから60代の女性まで年齢には幅があったけど、いずれにしてもすごい。12月末の日本海側、自分は薄手のダウンを着ていたけど寒かった。


これには普通に胸を打たれた。滝行を終えて戻ってきた『光の道』ご一行に声をかける。
「ウオーすごかったです…!毎年冬でもこれやってるんですか…!」
「そうですね、もう何十年も」「えっ何十年もですか!?」
「はい、私たちが子どものときからですからね」「ウオー、ほんとにすごいすね…」
「いやー、ハハ…」とはにかんでいるが、くたびれることもなく、寒さにブルブル震えたりとか「まじきつい~」みたいな素振りを見せるとかもなく、シャンとしている。



若者のバイブスを見せるしかない



何の準備もなかったからせっかくのふんどしも持っていないが、滝においては負けられない。60代~80代が見せたバイブスに、20代が「いや~めっちゃ寒いし準備もしてないんで…ハハ…」とは言えない






やめといたらよかった



めっちゃ冷たい。足の感覚はすぐになくなった。
というかめっちゃ痛い。冒頭にも書いたけど、高さがあるからなのか水流がほんと痛い。パンチが重い。

滝行は、見た目には「これが滝~?シャワーレベルじゃん」みたいなとこでも、実際に入ると「ワッ息ができねえ」ってなったりして、見た目より水圧がきつい。
今回も見た目にはそんなかもだけど、背中が真っ赤になってるんじゃないか、と思う痛さ。あがってすぐ「背中めっちゃ青アザになってない?」って友人に聞いたほどだった(一切なってなかった)




それでも何とか手を合わせて拝みながら浴び倒した。先達に習い、場所を変えてさらにもう一回。
アドレナリンが出てるからか寒さはけっこう気にならないんだけど、やっぱり本当に痛い。

滝に一礼して、滝行を終えた。写真を撮ってくれてた友人にあとで聞いたら浴びてる時間、おじいちゃん達より全然短かったらしい。


あがったら一気に信じられないぐらい寒くなった。青アザはできてなかったけど、冷えすぎてなんか背中と手がめっちゃ青くなってた。青ざめてる、とかじゃなくて普通に青だった。足先は水からあがってからも結局30分以上も感覚が無いままだった


ブルブル震えていると『光の道』の一人、さっきまで全然喋ってくれなかった無口なおじいちゃんがゆっくりこっちに歩いて来て、「…たいしたもんだ、立派だった…」と言って、おれの頭をポン、ポンと撫でてくれた。
何十年もこの滝に祈りを捧げ続けてきた男に認められた瞬間だ。




滝にハマって、滝のことばかりを考え続けたこの2013年の「滝納め」に日本の滝100選に選ばれてる滝を選んだんだけど、
まさかこの真冬に突然の滝行をするとは、そして日本海のトーチを渡されることになるとは全く思ってなかった、すごく感慨深い


滝にはドラマがある 2013年クリスマス・イブ ヤング




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